勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
高校生だから、と言おうとした瞬間、



苔に覆われた石段でつるりとすべった。




前のめりに転びそうになったところを



九条さんの片手に抱きかかえられて。




び、び、び、びっくりした!




こ、転ばなくて良かった……!




ドロドロの振袖で戻ったら絶対に怒られる!




九条さんに支えられて視線をあげると、



すぐ目の前には九条さんの綺麗な瞳。




ち、近い! ものすごく近いです!




九条さんの両手に支えてもらって体を起こしたけれど、



もう心臓は爆発寸前!




ドキドキしすぎて、心臓痛い!




「ケガしなかった?」




私のことを心配そうに覗き込む九条さんは、



ぎゅっと唇を強く横に引いて、必死に……




笑うのを、こらえている。





「笑ってますね?」





「いや、まだ笑ってない」





「……これから、笑うんですね?」





「……っ、笑ってもいい?」





「ダメです、ってもう笑ってますけど!」





「い、いや。可愛いなと思って」




ああ、もう……




情けないし恥ずかしいし!




九条さん、笑ってるし!




いたたまれない思いで下を向くと、



九条さんの柔らかい声に包まれる。




「ここ、つかまって」




「え?」




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