勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「このあたり、滑りやすいから」




煌めく笑顔で自分の腕を差し出す九条さんに、



ふるふると首を横にふる。




「だ、大丈夫ですっ」




こうして一緒にいるだけで



心臓がただならぬことになっているし、



恥ずかしいし、緊張するし!





気持ちが忙しすぎて、これ以上はもう……





「西園寺家の大切な“真桜”さんを、



ケガさせるわけにはいかないだろ」




「で、でも」




「転んだら綺麗な着物が汚れるよ?」




ううっ。




それを言われると……




「はい、どうぞ」




九条さんを見上げると



極上に甘い笑顔を返されて。




くっ……!



九条さんのこの笑顔、ずるいっ……!



緊張しながらそっと九条さんの腕につかまった。



大人の男のひとって、みんなこんな感じなのかな?




心臓がバクバクと飛び跳ねて、必死で呼吸を整える。




心臓、爆発しちゃうかも……




「大丈夫?」




九条さんに顔をのぞきこまれて、



コクコクと目を合わせないように全力でうなづくいた。




本当は全然、大丈夫じゃないのだけれど!



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