勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
大学の講義を終えてカフェテリアに行くと、



琉人がひらひらと手を振っている。




「千里、またスーツ着てんのかよ。



就職活動してるわけでもないのに、どうしたんだよ」




「いろいろあるんだよ」




はあ。




「最近、溜息も多いよな」




「彩梅がバカすぎるんだよ」




昨日の彩梅には、さすがに参った。




「はいはい、うちの彼女が可愛くて困ってますって? 



お前さ、無意識なんだろうけど、結構、のろけてるからな」




「は? だれが」




「まずは先週の九条くん。



『はあ、コタロウも彩梅にはかなわないよ』



つまり、コタロウもかなわないくらい彩梅ちゃんが可愛い」




「そんなこと、一言もいってないよな?」




「そして、一昨日の九条くん。



『コタロウみたいに繋いでおけたら、まだ安心できるのにな』



これ、彩梅ちゃんをコタロウみたいに繋いでおきたいってことで、



結構ヤバイから。マジで気を付けて、その発想」




「そういう意味じゃねえだろっ。



勝手に解釈すんなよ」




「ついでに今日のお昼時の九条くん。



『あいつ、今頃なにしてんだろ。大丈夫かな、マジで』



普通に考えて、学校で弁当食ってる時間だから



心配する要素なんて、全くない。



あえて言えば、



登下校中にほかの男に声かけられなかったかな、



ってところか?



つまり、朝も昼も夜も彩梅ちゃんのことが



心配でたまらないんだろ。



もう、さっさと結婚しちゃえよ」




にやにや笑ってる琉人から視線をそらす。




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