勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

彼氏だったらよかったのに。

学校に到着すると、



教室で真希ちゃんたちが輪になって盛り上がっている。




「あ、おはよ、彩梅! 



ちょっと聞いてよ、花江に彼氏ができたんだって!」




「わわっ! おめでとうっ!」




すると、花江ちゃんが恥ずかしそうに、



スマホで彼氏と写っている写真を見せてくれた。




「駅で告白されて、つきあうことになったんだけど、



本当のこと言うとまだ実感がないんだ」




正直な花江ちゃんの言葉に、羨望のため息。




「いいなあ」





話したことがない人でもつきあうことになったり、



婚約前提でつきあっていても、



相手にしてもらえなかったり。




現実はなかなか残酷。




私はいつまで、



九条さんと一緒に過ごすことができるんだろう……




「彩梅はいいでしょ! 



あんなに素敵な婚約者がいるんだから!」




「そうだよ、この前の改札での抱擁は驚いたよっ!」




ほ、抱擁⁈ 



なんだか生々しい!




「で、でも、彼氏ではないから」




「わざわざ学校まで迎えに来てくれるなんて、



愛されてるじゃん!」




「おじいちゃん達に



迎えに行けって言われたんだよ、きっと」




私と九条さんの関係は、花江ちゃんとは全然違う。




形だけのもの。




その日は一日中、花江ちゃんの彼氏の話で持ちきりだった。




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