勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
どんよりと沈んだ気持ちで改札を抜けると、



名前を呼ばれた。




顔を上げると、



目の前にいるのはブレザーを着た見知らぬ男の子。




……だれだろう?




「あの、俺、いつもこの駅で西園寺さんのこと見ていて、



一度話してみたいなって」




今は九条さんのことで頭がいっぱいで、



なにも考えられない。




「ご、ごめんなさい……」




「えっと、じゃ、せめて、スマホ、交換してもいいですか?」




「……え?」




スマホを交換?




「あ、いや、スマホじゃないや。連絡先だ」




びっくりした……




「ごめん、緊張して」




「あ、いえ」




ちょとだけ笑ってしまった。




「あ、良かった、笑ってくれて。



あの、それで、もしよかったらこのあと一緒に……」




「ごめんな、それは無理」




突然現れた九条さんに、一気に鼓動が駆け足に!




「ど、ど、ど、どうして、九条さんが?」




「迎えに来るって言っただろ?」




「神出鬼没……!」




「なんだよ、それ」




でも、……すごく嬉しい。




ちらりと見上げた九条さんの横顔に、キュンとする。




「あ、あの、彼氏さん、ですか?」




その一言に、ドキリ。




……九条さんが、彼氏に見えるのかな?




ドキドキしながら、九条さんを見つめると。




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