勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「嫌なことでもあったのか?」



言いながら、



優しく笑ってる九条さんをちらり。



「九条さん、なんだか楽しそうですね……?」




私、すごくひどいこと言っちゃったのに。




「いや、怒ってる彩梅も、面白いなと思って」



……面白い⁈



「九条さん、ひどい!!」



「ウソだよ、どんな彩梅も可愛いよ」



……コタロウ的な意味での可愛いって知ってるし!



「よしよし、元気だせ」



九条さんはまだ私の頭をなでていて。



ううっ……。



「私、コタロウじゃない……!」



「それなら、ほら」




九条さんが手のひらを差し出した。




「手、つなぐ?」



「つな、つながな、つなぎ……たい」



「深く考えるなよ、ほら行くぞ」



ぎゅっと手が握られて。



ひゃっ!



「彩梅のリード替わりだろ?」



九条さんは甘く笑っているけど。



「リードって、や、やっぱりコタロウ扱いしてる‼」



「コタロウも彩梅も可愛いからな」



くう…。



もう、九条さんはずるいっ……!



「元気だせよ、彩梅」



振り返って笑う九条さんは、



すごく大人で優しくて。



手のひらから伝わる九条さんの体温に、



なんだか涙がこぼれそうになる。



私ばかりが好きで、辛い。




だから、どうか少しでも長く、


九条さんのとなりにいられますように。



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