勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
その日の夜、いつもより少し早い時間に



九条さんから電話があった。




『落ち着いたか?』




『はい、あの、今日はごめんなさい』




『いいけど、よく声かけられるよな』




『え?』




『男に』




あ……、すっかり忘れてた。




『……心配ですか?』




『ものすごく心配。



だから迎えに行ってるんだろ』




かすかに不機嫌なその声に、



本音が滲んでいる気がしてドキリとする。




たとえ保護者目線だとしても、



責任感が強いだけだとしても、嬉しい……




『でも、彩梅が元気になったなら、良かった』




『はい、もう大丈夫です!』




ホントに単純だけど。




『テスト勉強、無理すんなよ』




『頑張ります!』




九条さんの低くて優しい声に、頬っぺたがゆるむ。




いつもより、少し長く電話で話して、



一日の最後に九条さんの『おやすみ』の声が聞けて。




ふわふわした気持ちで目をつぶった。



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