勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
帰りのHRが終わると、



うっすらとグロスを塗って、髪の毛を整える。




「彩梅、グロス、めっちゃ可愛いっ」




「いいねえ、恋しちゃってるねえ」




「おかしくないかな?」




普段グロスなんて塗らないから、なんだか落ち着かない。




「最高に可愛いよ。頑張っておいで!」




「うん、行ってくるっ」




九条さんに会えるのが嬉しくて、



軽い足どりで駅へと向かう。




家の近くの最寄り駅の改札を抜けると、



すぐに九条さんの姿を見つけた。




かっこいいなあ……





すらっと背が高くて、透明感があって、



ちょっとした仕草とか表情がものすごく大人っぽくて。





遠くから見ているだけでドキドキする。




「彩梅」




柔らかな笑顔で九条さんに名前を呼ばれて、



あわてて駆け寄ると頭をなでられた。




嬉しいんだけど。




うん、嬉しいんだけど。




「コタロウ……だと思ってませんか?」




「うん、ちょっと似てるなって思った」




「……ワン?」




「相変わらず面白いな」




キラキラ光る九条さんの笑顔に、



心臓がきゅっと苦しくなる。




「それより、急にどうしたんですか?」




「話があって来た。どこか行きたいところ、あるか? 



車で来てるから多少遠くても大丈夫だよ」




「それなら、



九条さんの秘密の場所に行きたいです!」




「秘密の場所って、あの公園?」




「はい!」





だって、あの公園は、



九条さんが私だけに教えてくれた特別な場所。



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