勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
すると、九条さんが



私の薬指に結んだ赤いリボンに触れる。



「ごめんな、彩梅」



どうして九条さんが謝るの?



下を向くと涙がこぼれそうで、



ぎゅっと唇をかみしめる。



「彩梅、今はちゃんと高校を卒業して、



大学に進むことだけを考えろ」




「どうして九条さんは、



……そんなに落ち着いていられるんですか?」




「落ち着いてるように、見えるか?」




怒っているような九条さんの低い声。



おじいちゃん達に振り回されたのは、



九条さんだって同じだ。



ただ、私とは気持ちが違ってただけ。



でも、それでも……



「たまに、会ったりとか……」



その先は、かすれて声にならない。



分かってる、そんなの無理だって。



西園寺家が決めたことに、私たちは逆らえない。



私たちは家同士が決めて、一緒にいただけ。



友達でもなければ、



本当の恋人同士でもなかったんだから……




「彩梅、家同士が決めたことに従うっていうのは、



こういうことなんだよ」




辛そうに目を伏せた九条さんに、



それ以上わがまま言うことなんてできなかった。



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