勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
おだやかな風に包まれて、



前を歩く九条さんの髪が揺れる。




「ずっと九条さんに会いたくて、



会えなくて、……辛かった」




九条さんが返事をするように、



つないだその手に力を込める。




「彩梅、綺麗になったな」




「九条さんは、いつもカッコよくて、ずるいです」




「……ずるいってなんだよ」




懐かしいな、九条さんの少し低い声。




優しい話し方。




また、こうして九条さんと話せる日がくるなんて



思わなかった。




じっと九条さんの背中を見つめて、



想いを言葉にのせる。




「好きです、九条さん。



初めて会ったときからずっと。一日も忘れられなかった」




この半年、自分の気持ちをちゃんと伝えなかったことを、



ずっと後悔してた。




けれど九条さんは私の精一杯の告白に、



くしゃりと私の頭をなでただけ。




「彩梅、すこし時間ある?」




小さくうなづくと、



そこから九条さんが向かったのは



カフェでも公園でもなく、タワーマンションだった。




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