勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「婚約破棄が正式に決まったときに、



彩梅のお父さんから言われたんだ。



彩梅が高校を卒業したときに気持ちが変わってなければ、



もう一度会いに来いって。



ただし、それまでは完全に離れろ、


その間は連絡も取るなって。



だからこの半年、



必死になって彩梅を迎えに行く準備をしてたんだよ」




九条さんの手のひらが私の頬にふれて、



ぎゅっと唇をかみしめる。




「彩梅の左手の薬指に赤いリボンを結んだのは、



俺なりの意志表示だった。



いつか一緒になろうなって思いながら、



リボンを結んだんだよ。



でも、まあ、……伝わらないよな」




苦笑いする九条さんを、まっすぐ見据える。




「それなら、もう一度、結んでください」




「え?」




驚いた顔をしてる九条さんに、



手のひらに乗せた赤いリボンを差し出した。




「“いつかどこかで偶然会えたら、食事に行こう”って、



出会った頃に九条さんが言ってくれたから。



いつか偶然どこかで会える日を、ずっと待ってました」




「彩梅、頼むから、そんな可愛いことばっかり言うなよ」




困ったように甘く笑う九条さんが、



私の薬指に赤いリボンで蝶結びをつくる。




じっとその指先を見つめていると……




「好きだよ、彩梅」




少しかすれた九条さんの声にゆっくりと顔をあげた瞬間、



九条さんの唇が私の唇に置かれた。




九条さんの唇から伝わる甘い体温に、



もう心臓は爆発寸前。




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