勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
会食を終えて、



料亭の日本庭園を九条さんと並んで歩く。




煌めく春の日差しが若葉を輝かせ、



時折、名残りの桜の花びらがちらちらと舞う。




「やっぱり、彩梅は着物が良く似合うな」




「九条さんこそ、



こんなに和装が似合うなんて、反則です」




「惚れなおした?」




「当たり前です」




恥ずかしくて、まっすぐに顔を見れないほど、



よく似合っている。




こういうときの九条さんは本当にズルい。




私ばっかりが、どんどん好きになっていく。




太鼓橋にさしかかると、



くるりと九条さんが振り向いて、



意地悪な顔をして手を差し出す。




「転ぶ?」




「転びません!」




ふたりで同時に吹き出した。




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