勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「けど、迷子にならずに



俺のところに戻ってきてくれて良かった」



甘く笑った九条さんの胸のなかに抱き寄せられて、



思わずぽつり。



「離れてる間、九条さんも少しは、その……



私に会えなくて寂しいなって……、思ってくれましたか?」



ドキドキしながら、聞いてみる。



「当たり前だろ。



彩梅が変な奴に引っかかってないか



気が気じゃなかったよ」




「もし……もし万が一、



私がほかの人とお見合いして、その人と一緒にいたら……」




「彩梅のことを、奪いに行くつもりだった」




真剣な声色で答えた九条さんにびっくりして顔をあげると、



優しいキスが降り注ぐ。




「俺は彩梅ほど可愛い女を知らない。



だから、来世でも来来世でも、



絶対に彩梅のことを見つけにいくよ。……って、どうした?」




 九条さんの手のひらに頬を包まれて、



もう顔が熱くてたまらないっ。



「九条さん、あの、さ、さすがに恥ずかしいです!」




「そうしないと、彩梅には伝わらないからな。



察する、とか苦手みたいだし、



肝心なセリフを言ったときに限って、耳が遠くなるし」




「耳、遠くなったりしませんよ⁈」




「これまで何度、俺の本気の告白を聞き流されたことか」




溜息交じりの九条さんの顔を覗き込んで、宣言する。




「これからは察することができるように、頑張ります!」




「特訓する?」




「また、特訓ですか?」




「そう、本格的なやつ」




「お願いします!」




笑って答えた瞬間、九条さんの唇に、



続きの言葉をさらわれた。




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