勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
すると九条さんが楽しそうに、首をかしげる。




「人形焼とか、煎餅とか、なにか少し食べてみる?」




「う、うわあ!」




って、ダメダメ! はしゃぎかけた自分を戒める。




「……歩きながら食べるのは、



着物、汚しちゃうかもしれないので」




「たしかにそうだな。じゃ、それはまた今度ってことで」





うん、本当に残念だけれど。





そこに漂う手焼きせんべいの香りに、



しょんぼりと肩を落とす。




「そんなに落ち込まなくても」




九条さんはくすくす笑っているけれど、



大好きなものばかりが視界に飛び込んできて、



これはなかなか辛いです…





「見かけによらず、お子様味覚?」





九条さんのその一言に、ぴたりと足をとめる。




そういえば高校生だってこと、まだ伝えていなかった!




「あの、九条さん、私……」





振り返った九条さんの甘い笑顔に



思考が完全停止。





九条さんの優しい笑顔に包まれると、



胸の奥がぎゅっと苦しくなる。




九条さんは、どこか懐かしさを感じさせる不思議なひと。




柔らかな笑顔のせいなのかな……



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