勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

緊急事態!

はあ。




2時間目の古典の授業中、ぼんやりと窓の外に視線を向ける。



昨日の九条さんを思い出しては、心が浮いたり沈んだり。




「彩梅、どうしたの?」




「なんだか、今日の彩梅、おかしいよね?」




「なんでもないよっ」




仲良しの萌花ちゃんと真希ちゃんにそう答えながらも、



頭のなかは九条さんのことばかり。



すごく、優しいひとだったな……



笑われてばかりだったけど、楽しかった。




ドキドキしすぎて苦しかったけど、


いつかまた九条さんに会えるといいな……





九条さんのことを考えていたら、


あっという間に一日が終わってしまった。




家に帰ると、お母さんがパタパタとやってくる。




「おかえりなさい。あのね、彩梅」





「ごめんね、ちょっと部屋で休んでくるね」





お母さんに沈んだ顔を見られたくなくて、


すぐに部屋に向かう。
 



もともと九条さんはお姉ちゃんの許嫁だったんだし。




私が相手にしてもらえるようなひとじゃないのは、


誰よりも自分が一番よくわかってる。




九条さんには、もっとキレイで大人の女の人がよく似合う。




ベッドに転がって、ぼんやりと昨日のことを思い出す。




夢みたいな一日だったな。




いつか私がお見合いするときに、


九条さんみたいな素敵なひとに出会えるといいな……。




そんなことを考えているうちにうとうとと眠ってしまって


コンコンと部屋がノックされて、慌てて起き上がった。




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