勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
キョトンとしている九条さんのシャツを両手で握ると、



ぐぐっと自分に引き寄せる。




「……は?」




九条さんは目を見開いて唖然としている。




あれ……?




ぎゅぎゅっと、九条さんの胸元をつかんで引っ張ると、



勢い余っておでこが九条さんの胸にぶつかった。




んんん?




学校で習った空手を披露して、



安心してもらおうと思ったんだけど、どうやら失敗?




びくともしない九条さんを、



それでも必死でぐいぐいと引き寄せると。




「あのさ、なにしてんの?」




深いため息が頭上で落ちる。




「そ、その、体育の授業で空手を習ったので、



そんなに心配しないでも大丈夫ですよって伝えたかったんですが」




「……世間一般から見たら、



彩梅が俺に抱き着いてるようにしか見えないと思うけど。



それも、かなり情熱的に」




えええっ‼




「あのさ、好きにしてくれって言ってるようなもんだから、



これ、絶対禁止な。二度とやるなよ? わかったか?」




「九条さんに安心してもらおうと思ったんですけど……」




「不安にしかならねえよ‼ お前、マジで大丈夫かよ。



頼むからもっとしっかりしてくれ……」




ううっ……





本気で怒られた………





な、情けない……


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