勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「彩梅、こっち向いて」




無理です……




このままだと、心臓潰れてしまいます……




「首まで真っ赤になってるけど、どうした? 



特訓するって言ったのは、自分だよな?」




九条さんにくるりと背中を向けて、



コタロウくんの隣に膝を抱えて座り込む。





「コタロウくん、九条さんってさ、けっこう意地悪だよね。



見かけによらず、口も悪いし」





コタロウくんにこそっと呟くと……





「コタロウは俺の味方だよな」





奪うようにコタロウくんを両手で抱えて、



九条さんが楽しそうに笑う。





「コタロウくんはどう思う?」





九条さんに対抗するようにじっとコタロウくんを見つめると、



ぺろりとコタロウくんに顔をなめられた。





うわわっ!






びっくりして後ろにのけ反ると、



勢い余ってそのままぐらり。




芝生のうえに仰向けにひっくり返る寸前に、



九条さんに抱きとめられた!




はっと目を開いたときには、九条さんの胸のなか。





……ううっ。





私をうしろから抱きかかえる九条さんと、



不思議な体勢のまま見つめ合う。





「コタロウに押し倒されるとか……、あ、ありえねぇ……っ!」




 
私を抱きかかえながら大爆笑する九条さん。




ううっ、もう自分が嫌になるっ!




「ご、ごめんなさい……」




体を起こしながら謝った。




さすがに、情けない。




「いや、ケガしなくてよかったよ」




……笑いながら言われても。




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