勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「はい、アメどうぞ」




目をぱちくりしている私の前で、



九条さんが私の頭をくしゃくしゃとなでる。




「くくっ、冗談に決まってんだろ? 



キスでもされると思った?」




「そ、そんな高度な冗談、全然わかりません……!」




泣きそうになりながら呟いた。




弾け飛んじゃいそうなこの心臓、どうしてくれるっ!




「……九条さん、ちょっと意地悪」




「彩梅はホント、素直だよな」




一応、褒められてる……のかな。




「つうかさ、そんなに隙だらけでどうすんだよ」




怒られてます。




はあ。




九条さんのキラキラ眩しい横顔をちらりと覗いて、



こっそり呟く。




「“隙だらけ”、じゃなくて、九条さんのことが、“好きなだけ”です」




「は?」




「……なんでもないです!」




「なにをふてくされてんだよ」




「別にふてくされてません!」




ぷくっと頬っぺたをふくらませて、口を尖らせる。




「……九条さん、ちょっと意地悪すぎます。



お見合いの日はすごく優しかったのに」




「じゃ、優しくしようか?」




「……近いですっ!!」




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