歪ーいびつー(どんでん返し系 狂愛ミステリー)
※※※
「ーー夢ちゃん。ほら、おいで」
「っ……ありがとう」
楓くんに抱えられるようにして降り立った私は、顔をそっと上げると小さく微笑んだ。
ーーオリエンテーション合宿に来ている私達は、今、樹海にある溶岩洞窟へと来ている。
その入り口で、怖がって中々下へ降りられないでいた私を、楓くんが下から抱き上げて下ろしてくれたのだ。
「……中は暗いから、気を付けてね」
「うん」
「また夢ちゃん、泣いちゃうかな~」
「……泣かないよ」
「でも、暗いとこ苦手でしょ?」
「……もう高校生だから、泣かないよ」
「そうなの?」
そんな事を言って私をからかいながらも、「そこ、気を付けてね」と時折気に掛けては手を差し伸べてくれる楓くん。
暗くて不気味な洞窟は、やっぱりとても怖くてーー内心、もう帰りたいと思っていた私だけれど。
綺麗な氷柱を見た時にはとても感動して、諦めずに最後まで来て良かったと、そう心から思えた。
ーーーーーー
ーーーー
樹海やら洞窟やらで、やっぱり凄く怖かった私は、宿泊先へ着くとドッと疲れが出た。
(飲み物でも、買いに行こう……)
一人、宿泊部屋を出た私は、カラカラになった喉を潤そうと、1階にある自動販売機へと向かった。
お茶の入ったペットボトルを買うと、その場で軽くコクコクと飲む。
喉も潤ったところで、宿泊部屋へ戻ろうと後ろを振り返った、その時ーー
ちょうど、目の前の階段を降りてくる奏多くんの姿が視界に入った。
ここ3日ほど奏多くんのことを避けていた私は、奏多くんの姿を見て思わず逃げ出したーーはずだった。
あっさりと奏多くんに捕まった私は、手首を掴まれると壁に押し付けられた。
その衝撃で、持っていたペットボトルは私の手元から滑り落ちて床を転がってゆく。
「ーーやっと、捕まえた」
笑顔で見下ろす奏多くんが恐ろしくて、カタカタと震え始めた私の身体。
思わずギュッと固く瞼を閉じると萎縮する。
「ーーねぇ、何やってんの?」
突然聞こえてきた隼人くんの声に、私は閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
床に転がったペットボトルを拾い上げた隼人くんは、そのままこちらへ近付くと奏多くんの腕を掴んだ。
「夢ちゃん、怖がってるじゃん」
私から奏多くんを引き剥がすと、「夢ちゃん、行こっ?」と言って笑顔で右手を差し出してくる。
チラリと奏多くんの様子を伺ってみると、その顔は怒りで溢れていてーー
この場にいたくないと思った私は、差し出された手に自分の手を添えると、促されるままに隼人くんと共に歩き始めたのだった。
ーーーーーー
ーーーー
「ーー夢ちゃん。ほら、おいで」
「っ……ありがとう」
楓くんに抱えられるようにして降り立った私は、顔をそっと上げると小さく微笑んだ。
ーーオリエンテーション合宿に来ている私達は、今、樹海にある溶岩洞窟へと来ている。
その入り口で、怖がって中々下へ降りられないでいた私を、楓くんが下から抱き上げて下ろしてくれたのだ。
「……中は暗いから、気を付けてね」
「うん」
「また夢ちゃん、泣いちゃうかな~」
「……泣かないよ」
「でも、暗いとこ苦手でしょ?」
「……もう高校生だから、泣かないよ」
「そうなの?」
そんな事を言って私をからかいながらも、「そこ、気を付けてね」と時折気に掛けては手を差し伸べてくれる楓くん。
暗くて不気味な洞窟は、やっぱりとても怖くてーー内心、もう帰りたいと思っていた私だけれど。
綺麗な氷柱を見た時にはとても感動して、諦めずに最後まで来て良かったと、そう心から思えた。
ーーーーーー
ーーーー
樹海やら洞窟やらで、やっぱり凄く怖かった私は、宿泊先へ着くとドッと疲れが出た。
(飲み物でも、買いに行こう……)
一人、宿泊部屋を出た私は、カラカラになった喉を潤そうと、1階にある自動販売機へと向かった。
お茶の入ったペットボトルを買うと、その場で軽くコクコクと飲む。
喉も潤ったところで、宿泊部屋へ戻ろうと後ろを振り返った、その時ーー
ちょうど、目の前の階段を降りてくる奏多くんの姿が視界に入った。
ここ3日ほど奏多くんのことを避けていた私は、奏多くんの姿を見て思わず逃げ出したーーはずだった。
あっさりと奏多くんに捕まった私は、手首を掴まれると壁に押し付けられた。
その衝撃で、持っていたペットボトルは私の手元から滑り落ちて床を転がってゆく。
「ーーやっと、捕まえた」
笑顔で見下ろす奏多くんが恐ろしくて、カタカタと震え始めた私の身体。
思わずギュッと固く瞼を閉じると萎縮する。
「ーーねぇ、何やってんの?」
突然聞こえてきた隼人くんの声に、私は閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
床に転がったペットボトルを拾い上げた隼人くんは、そのままこちらへ近付くと奏多くんの腕を掴んだ。
「夢ちゃん、怖がってるじゃん」
私から奏多くんを引き剥がすと、「夢ちゃん、行こっ?」と言って笑顔で右手を差し出してくる。
チラリと奏多くんの様子を伺ってみると、その顔は怒りで溢れていてーー
この場にいたくないと思った私は、差し出された手に自分の手を添えると、促されるままに隼人くんと共に歩き始めたのだった。
ーーーーーー
ーーーー