歪ーいびつー(どんでん返し系 狂愛ミステリー)
奏多【回想】
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風に揺れて、サラサラと揺れる少し色素の薄い綺麗な髪。ピンク色のワンピースを着て、ちょこちょこと歩く女の子。
俺はその後ろ姿に向けてほんの少しだけ目を細めると、口元に薄く弧を描いてから口を開いた。
「ーー夢」
俺の声に反応して、こちらを振り返った夢。
その顔はとても愛らしく、まるで天使のよう。
垂れ目がちの大きな瞳は、俺を捉えると優しくその形を変える。
クスリと小さく声を漏らした夢は、「奏多くん、食材ありがとう」と言って、まるで花が咲いたかのような笑顔を見せた。
ーー3年でクラスが同じになった事がきっかけで、仲良くなった夢。
気が付けば、いつも側には夢がいた。
あれから2年経った今でも、変わらず側にいる夢。
気が付けば俺はーー夢を、好きになっていた。
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「ひゃっ……やぁぁー!」
少し前を歩いていた夢が、突然叫び声を上げて後ろへ下がると、そのままよろけて尻もちを着いた。
「いやぁー……っぅ……こわい゛ぃぃ……ぅぅぅっ……おうちっ……かえりたっ……いぃぃ……ぅ……こわっ……いよっ……ぉぉっ……ヴっ……こわいっ……ぃぃ~っ……」
我慢しきれなくなったのであろう夢が、転んだままその場で泣き始める。
「「「「「夢!」」」」ちゃん!」
俺は急いで夢の元まで駆けつけると、蹲る夢を抱き起こした。
「……ほら、夢。そんなところにいつまでも座ってちゃ駄目だよ」
「夢ちゃん、痛いところない?」
心配そうに、夢の身体や手に付いた土や葉っぱを払ってゆく楓。
「夢……大丈夫?」
「こめん、夢。光につられて、虫が寄ってきたのかも。……夢、虫嫌いだもんね。ホントにごめん」
心配そうに夢を見つめる朱莉と、その隣りで申し訳なさそうな顔をみせる涼。
「っ……ぅ……っ……こわっ……ぃぃ」
「ほらぁ……、夢。もう泣かないで? 怖くないから……ね?」
怖がる夢を宥めるようにして、ハンカチで優しく涙を拭ってゆく優雨。
「皆んなで一緒に行くんでしょ?」
少し落ち着きを取り戻したのか、優雨にそう言われた夢は涙を流しながらも小さく頷いた。
「夢……。本当に、大丈夫?」
相変わらず、心配そうに夢を見つめる涼。
「大丈夫だよ、夢。俺がついてるから」
俺はそう言うと、安心させるようにして夢の小さな右手を握った。
「じゃあ……こっちは俺ね? ……これでもう、怖くないね?」
夢の左手を握った楓が、そう言って小首を傾げて顔を覗くと、躊躇いがちに小さく頷いた夢。
「あと少しだから、頑張ろう。夢」
優しい笑顔を向ける涼が、ポンポンと夢の頭を撫でてあげると、夢はポロポロと涙を流しながらも大きく頷いた。
「じゃあ、行こうか」という涼の言葉を合図に、改めて出発となった俺達。
左隣りにいる夢をチラリと見てみると、グズグズと泣きながらも懸命に歩いている。
その姿を目にした俺は、夢を守ってあげたいーーそう、強く思った。
暫くすると泣き止んだ夢は、時折ビクッと肩を揺らして怖がってはいたものの……。
その表情は、幾分か柔らかくなった気がする。
俺はホッとしたのと同時に、そんな夢がただただ可愛くて、握っていた手にキュッっと力を込めた。
(ずっとずっと……俺がこうして、夢の側で守ってあげる)
そう、思っていたのにーー
「ーー夢、おいで」
そう涼に呼ばれると、夢は俺と繋いでいた手をなんの躊躇いもなく離してしまう。
そうして夢はーー
俺の隣から、いつだって簡単にいなくなるんだ。
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