歪ーいびつー(どんでん返し系 狂愛ミステリー)
楓
※※※
「は? ……逃げてばかりって、何?」
俺の胸倉を掴んでいる奏多の手首を掴むと、そのまま奏多を鋭く睨みつける。
「お前は……。昔から、他の女に逃げてばかりだろ?」
そう言ってニヤリとほくそ笑んだ奏多。
その挑発的な態度に腹が立ち、奏多の胸倉を掴み返すとその身体を壁に突き押した。
そのまま睨み合う、俺と奏多ーー
「……本当の事だろ? 楓、お前は怖くて逃げてるんだよ」
「……っ!」
拳を握り、奏多を殴ろうとしたーーその時。
「やめ、てぇ……っ! ごめんなさっ……私がっ……私が、悪いの……っ」
泣きながら、俺と奏多の腕を掴んだ夢ちゃん。
その手元を見てみると、小さくか細い指はカタカタと震えている。
「……夢ちゃん。危ないから、離れて」
優しくそう諭せば、フルフルと首を横に振って答える夢ちゃん。
「だめっ……。楓くっ……だめ……っ」
頑なにその場を離れようとしない夢ちゃん。
その様子を見て、奏多の胸倉を掴んでいた手を離すと、安全な場所まで離そうと夢ちゃんに向けて手を伸ばしたーーその時。
「ーー触るな!」
夢ちゃんをグッと抱き寄せた奏多が、怒りを滲ませた瞳で俺を睨みつけた。
「……夢。わかってるだろうけど、もうこの2人とは関わったらダメだよ。ーーわかった?」
俺を睨みつけたままの奏多を見上げ、戸惑いながらも小さくコクリと頷いて答えた夢ちゃん。
「っ……奏多!」
「だめっ……! ぅっ……ごめっ、んね……っ。優雨ちゃっ……、かえっ、でく……っ」
止めに入ろうする俺に、ダメだと言って首を横に振る仕草をみせた夢ちゃんは、悲しそうな顔をしてごめんねと謝る。
「お前達が夢に関われば、俺は夢に罰を与える。……それが嫌なら、金輪際夢には関わるな」
冷め切った瞳で俺と優雨ちゃんを交互に見た奏多は、吐き捨てるようにしてそう告げると、その視線を夢ちゃんへと向けた。
「夢は、俺の言う事だけを聞いていればいいんだよ。……じゃあ、帰ろうか」
愛おしそうに夢ちゃんの髪を撫でると、再び夢ちゃんを抱き寄せてそのまま歩き始めた奏多。
「夢……っ」
ポツリと小さな声で呟いた優雨ちゃんは、俺の隣で静かに涙を流す。
その横で、俺は立ち去ってゆく夢ちゃんの後ろ姿を眺めながらーー
ただ、ジッと佇んでいたのだった。
ーーーー
ーーーーーー
「は? ……逃げてばかりって、何?」
俺の胸倉を掴んでいる奏多の手首を掴むと、そのまま奏多を鋭く睨みつける。
「お前は……。昔から、他の女に逃げてばかりだろ?」
そう言ってニヤリとほくそ笑んだ奏多。
その挑発的な態度に腹が立ち、奏多の胸倉を掴み返すとその身体を壁に突き押した。
そのまま睨み合う、俺と奏多ーー
「……本当の事だろ? 楓、お前は怖くて逃げてるんだよ」
「……っ!」
拳を握り、奏多を殴ろうとしたーーその時。
「やめ、てぇ……っ! ごめんなさっ……私がっ……私が、悪いの……っ」
泣きながら、俺と奏多の腕を掴んだ夢ちゃん。
その手元を見てみると、小さくか細い指はカタカタと震えている。
「……夢ちゃん。危ないから、離れて」
優しくそう諭せば、フルフルと首を横に振って答える夢ちゃん。
「だめっ……。楓くっ……だめ……っ」
頑なにその場を離れようとしない夢ちゃん。
その様子を見て、奏多の胸倉を掴んでいた手を離すと、安全な場所まで離そうと夢ちゃんに向けて手を伸ばしたーーその時。
「ーー触るな!」
夢ちゃんをグッと抱き寄せた奏多が、怒りを滲ませた瞳で俺を睨みつけた。
「……夢。わかってるだろうけど、もうこの2人とは関わったらダメだよ。ーーわかった?」
俺を睨みつけたままの奏多を見上げ、戸惑いながらも小さくコクリと頷いて答えた夢ちゃん。
「っ……奏多!」
「だめっ……! ぅっ……ごめっ、んね……っ。優雨ちゃっ……、かえっ、でく……っ」
止めに入ろうする俺に、ダメだと言って首を横に振る仕草をみせた夢ちゃんは、悲しそうな顔をしてごめんねと謝る。
「お前達が夢に関われば、俺は夢に罰を与える。……それが嫌なら、金輪際夢には関わるな」
冷め切った瞳で俺と優雨ちゃんを交互に見た奏多は、吐き捨てるようにしてそう告げると、その視線を夢ちゃんへと向けた。
「夢は、俺の言う事だけを聞いていればいいんだよ。……じゃあ、帰ろうか」
愛おしそうに夢ちゃんの髪を撫でると、再び夢ちゃんを抱き寄せてそのまま歩き始めた奏多。
「夢……っ」
ポツリと小さな声で呟いた優雨ちゃんは、俺の隣で静かに涙を流す。
その横で、俺は立ち去ってゆく夢ちゃんの後ろ姿を眺めながらーー
ただ、ジッと佇んでいたのだった。
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