時には風になって、花になって。
いやまずはそれよりも身体を洗わせた方がいい。
鬼がそう思ってしまうくらい、少女は泥だらけだ。
「早く入れ」
翌朝、紅覇はサヤを連れてザーーーっと流れる滝へ向かった。
そんな滝を前に、ゴクリと唾を飲んだサヤ。
怯えた小鹿のように足は震えている。
(こわい…)
小さな口は訴えてくる。
怖いわけないだろう。
こんなものはただの水だ。
…と思ったが、人間からはどうやらそう見えるらしい。
「…仕方の無い奴だ」
ひょいっと軽々と小さな身体を拾って、そのまま滝の中へと突っ込む。
そうして掌から出した波動で水の流れに1つの空間を作った。
そうすれば水は優しい動きに変わり、空から降る雨のようになる。
「何をしている、早くしろ」
そんな光景に瞳を輝かせているサヤは、紅覇の袖をきゅっと握った。
一緒に入ろう───そんなふうに言っているらしい。
そういえば私も少し汚れていたか。
狩衣と襦袢を脱ぎ、袴1枚となる。
そして小娘の身ぐるみは全て剥がした。