時には風になって、花になって。
明かされる真実
「久しいな、紅覇よ」
その鬼を前にしたとき、鬼という感覚よりも普通の人を前にしているようだった。
それがきっと一番の恐怖なのだろう。
鬼という言葉ですら表現出来ない妖力。
「ほう、…その娘が妖狼一族の末裔か」
紅覇はグイッとサヤの腕を引き、背中に隠した。
そんなものを見つめて小馬鹿にするように“羅生門”という男は笑った。
ここが、紅覇の生まれた場所───。
雲のずっとずっと上。
到底人間が辿り着けない場所だった。
都というより、城だ。
「金鬼よ」
羅生門は傍に立つ鬼の名を呼ぶ。
それが合図だった。
「逃げても無駄だぜ紅覇。ここは結界が張れねェ部屋だ」
その暗闇の渦は、再びサヤへと向かってくる。
(っ…!!)
また雷の落ちるような衝撃。
けれど2度目に当てられたとき、何故か理性は失わなかった。
しかし瞳は青色に変わり、獣の耳、そして牙はギロリと光る。
「紅…覇…」