時には風になって、花になって。




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『私は人間になりたいの…!!』



その女子は不思議な子だった。

かつて一国を滅ぼした程の妖力を持つ一族───妖狼一族の姫として生まれたにも関わらず。



『全く、また騒いでいるのかあやつは』


『放っとけ放っとけ、今だけじゃ』



人間になりたいと言って聞かなかった。

名を“ウタ”という。



『ウタ姫様っ!また化けて外の世界に行くなど危険でございます…!』


『うるさーい!それに姫なんて呼ばないでっ!私は人間なんだからっ』


『お待ちくだされウタ姫───あっ、姫って言っちゃった…』



ひょいひょいと城を飛び出すお転婆娘。

それがウタだった。


そんな彼女は人間として人間が住む村へと遊びに行くのが大好きで。

違う種族の者と交流することが楽しみの1つだった。



『あははっ!それであんた落ち込んでんだ?』


『…落ち込んでなどいない』



そんな場所で出会った1人の青年。


ウタよりは年下の見た目だが、この青年は鬼一族の1人だった。

それでも自分を1人の人間として見てくれる特別な存在。



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