時には風になって、花になって。




『次会ったらあなたに伝えたいことがあるのっ!』



ウタはこの青年、紅覇に惹かれていた。


次会ったとき、私は自分の気持ちを伝えよう。

あなたが好きだと。

そして彼の前から姿を消そう、と。



『私も……お前に伝えたいことがある』



もし、彼と結ばれることが出来たなら…なんて。

馬鹿な夢だ。


───私のお腹には新しい命が宿っているというのに。


一族をまとめる次期後継者に抜擢されている男との子供が。

仕方ないとしても、それでも私はやはり人間にはなれない。



『約束よっ!忘れたら承知しないんだからっ!』



『あぁ』と微笑んでくれる紅覇。

ウタはそんな彼が大好きであった。


だからこそ次が最後。

本当の自分は妖怪であること、人間ではないこと。

まずはそれを謝らなければいけない。



『───…なん…で…』



一族の終わり、それは頂点に立つ者が殺されたとき。


紅覇に気持ちを伝える、お別れを言う。

その為にいつもよりめかしこんだ朝。


己の生まれた城の外は、血の海だった。



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