時には風になって、花になって。




『鬼だぁぁぁーーー!!!』


『お逃げくださいウタ姫様っ!旦那様は羅生門に殺されました…!!』



羅生門……。

政略結婚だったが自分の夫であり、腹の子の父である男はその名の主に殺されたと。


妖怪だからだ───…。

やはり自分が妖怪だから。


昔から人間や他の種族から忌み嫌われてきた。

私はただ皆と仲良くしたいだけなのに。



『はっ…はぁっ、紅覇っ…助けて紅覇っ…!!』



呼んでも呼んでも彼は来ない。

走って、転んで。
腹の子だけはどうにか守って。

待ち合わせたいつもの場所からは正反対へと、ウタはがむしゃらに向かった。


遠くへ逃げなきゃ。

ごめんね、紅覇───…



『…この子は…この子にだけはこんな思いさせちゃ駄目……』



一族がずっと極秘にしてきた禁術があった。


それは代償を捧げる代わりに、妖怪を人として生きさせることが出来るという禁じられた術。


ウタは、のちにサヤの母親となるその女は何百という年月の中でその禁忌を犯した。




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