時には風になって、花になって。
馬鹿な女だ、と羅生門は吐き捨てた。
「人間として偽り、人間として見てくれる貴様を愛し、最終的には女として母親の道を選んだ」
馬鹿な、女だ───。
もう1度吐き捨てる。
そんな羅生門の声は何故か微かに震えていた。
うん、おっかあは馬鹿だ。
きっと偽らなくても、紅覇はあなたを愛してくれたというのに。
「サヤ、と言ったな」
その青い炎を差し出してくる。
「この魂を貴様が飲めば、お前は妖怪に戻ることが出来る。そして失った声も取り戻すだろう」
禁術を解禁する方法はただ1つ。
それはどちらかの親の魂を飲み込むことだという。
何故あなたがそれを言ってくれるのか。
私のおっとうを、一族を殺したのに。
「…ただの暇潰しに過ぎん」
さっき、声が震えていた。
だからこそ紅覇も押し黙ったのだ。
「選択の余地を与える。それまでは貴様の姿は今のままだ。
…次の“日食”の夜、同じ質問をしよう」
人として生きるか、それとも妖として。
人として生きるならば声は失われたままだ。
そして寿命もある。
次の“日食”は───10日後。