時には風になって、花になって。
決断のとき
「空!木!火!あははっ!紅覇ー!綺麗だねぇ!」
声が出せるようになった少女は全ての森羅万象の美しさを肌で感じた。
それも期限付きであり、見た目は妖怪と人間の中間。
音色も女子とはお世辞でも言えない。
「随分と呑気だものだ」
確かに置かれている立場とは正反対の笑顔だと思う。
羅生門から真実を話され、そして元の場所へ戻って来たはいいものの。
紅覇とは真逆のはしゃぎっぷりに、サヤ自身もよく分からなかった。
「ねぇ見て!!魚採れたー!」
この姿だと1回だけ川へ顔を浸ければ、簡単に3匹は採れてしまう。
感覚も知覚も全てが狼へと変わってしまったらしい。
サヤは獣耳と尻尾が生えている程度にまで見た目は抑えられた。
それでも慣れていない身体を扱っている為、さすがに紅覇のように完全に人間の姿に化ける術は持っていなかった。
「紅覇、サヤ、決断する日までずっと紅覇と居たい」
「…既に居るだろう」
「うん、そうなんだけど…うーん、あ!毎日一緒に寝ようねぇ!」