時には風になって、花になって。
「サヤ、…紅覇の左腕になれたかな…」
役に立っていたかな。
あれから、あの日から3年は経っている。
それでも毎日助けられてばかりだった。
妖怪駆除の使いだと村人から尊敬の眼差しで見つめられても、紅覇がいつも片付けているだけで。
サヤは相変わらずちょこまかちょこまかと後ろを追いかけるだけ。
「なれてないよね、サヤはいつも足を引っ張ってばっかり…」
しゅんと項垂れる少女の頭を、ぎこちなくポンポンと優しく叩く青年。
「だったら逆に聞く。私はお前の声になれているのか」
「なれてるよっ!紅覇はいつもサヤの代わりに色んな言葉をくれるよ…!」
「…それなら私も同じだ。余計なことを気にするな」
紅覇、睡眠は必要なかったとしてもちゃんと寝なきゃ駄目だよ。
あとご飯も毎日食べるんだよ。
でも、長松さんにはあまり会っちゃ駄目。
だって紅覇と長松さんが2人だけで居るの見ると、胸がチクチクするの。
すっごい痛いんだよ。
「伝えられない…。サヤ、…声が出ても全然駄目だね…」
目を閉じる青年の頬に涙が落ちる。
サヤね、もう決めてるよ。
紅覇のあんな顔を見ちゃったら、やっぱり自分の気持ちだけでは選べないよ。
*