時には風になって、花になって。




「話しても鳴らしても黙り込むんだもん。ズルいよ紅覇」



どう答えればいいのだ。

それを言って、お前は笑うのか。


今ですら泣き出しそうな顔をしているというのに。

それでいて私ですら、前のように抱きかかえて空を飛ぶことさえしてやれない。



「…そんなにウタのことを愛していたんだね」



いつだったか、長松という女に言われた。



『いいかい紅覇、サヤはあんたに恋心を抱く可能性だってある』



もし今のサヤが私に抱く感情がそんなものだとするならば。

私はどう応えるのが正解なのか。



「紅覇は今、サヤを見てないよ。サヤを通してウタを見てる」


「…くだらんことを言うな」


「くだらなくない。紅覇は今でもウタを愛しているんだよ」



貴様のような小娘に何がわかる。

寂しくて夜に泣いていたような、走ればすぐに転ぶような。


そんな小童に何がわかるというんだ。



(わかるよ。サヤにも誰かを愛する気持ちはわかるんだよ。)



それを教えてくれたのは紅覇だよ───。


何故言葉にしていないと言うのに伝わってくるんだ。

お前の思っていることなど、わかる。



「最初から…紅覇はサヤにウタを重ねてたの」



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