時には風になって、花になって。
「紅覇が生まれたからお前はウタと出会った。
そしてかつてウタとお前が愛し合ったから人間である自分は今、お前と出会えた───と」
それを鬼一族の王である我に言ってきたのだ。
あの娘は面白い、と羅生門は豪快に笑う。
「お前はあの娘の神様らしいな」
妖怪だ、私は。
そう言っても“違う”と否定するのがサヤだった。
私を紅覇として見るのだ。
鬼でも人でもない、“紅覇”として。
「ウタが人間として見られたかったように、お前も鬼ではなく1人の存在として見られたかったのであろう」
「…なにを」
「ウタにとってのお前は、お前にとってのサヤだ」
親だと思ったことはなかった。
鬼は、戦いに生きる身。
家族や血の繋がりとは、生まれ落ちる為の手段でしかないと。
けれど妖怪も人間も変わらぬ───母の言葉はその通りかもしれないと思った。
「まだ解らぬか、…馬鹿息子よ」
初めてその男からの言葉。
羅生門、私はお前を殺そうとした男だ。
その左目だって紛れもない事実だというのに。
そんな男は、懐から青い炎の魂を出した。