時には風になって、花になって。
風になって、花になって
1人の青年はその姿を目にしたとき、見失わないように必死に追いかけた。
ここで捕まえておかないと、次会うときはもしかすれば自分は年老いてしまっているかもしれない。
手にしていた牧草を投げてまでも、タタタタッと空を飛ぶ存在を追いかける。
「はぁっ…!はぁっ、やっと追い付いた…!」
「…目障りだ。焼き殺されたいか」
「ええ!?オレのこと覚えてないの!?」
そう言えば前もそんなこと言われたっけなぁ───と、水牛飼いの青年は頭をかいた。
縁だよ縁!と、身ぶり手振り大袈裟に表現してみる。
「妖怪駆除してもらった縁だよ…!ほら、あっただろ!雨が止まない村でさ!」
あのとき確かオレは14歳だったっけ?
まぁ確かに3年経てば妖怪と違って人間は1日1日成長してるし、分からないかと納得もする。
しかし紅覇を纏う殺気のようなものは最初から皆無であった。
きっと忘れてなんかないのだろう。