時には風になって、花になって。
「紅覇さん、元気だった?」
「気安く呼ぶな」
「じゃあ妖怪さん?」
あれ、この人ってこんなに取っ付きにくかったっけ。
昔はまだ優しかったような気がする…。
あぁそっか。
サヤが居なくなったからだろう。
「見合いが近いんだ」
「どうでもよい」
「いやオレじゃなくてサヤだよ」
なぜ貴様がそんなことを知っている?なんて睨まれても。
だってあれからサヤがどこで暮らしてるか知ってるし。
それに今だって、会ってきた帰りだし。
「…長松さんの所で世話になってるんだよサヤ。松姉怒ってたよ、なんで紅覇は顔出さないんだって」
「ふん…くだらん」
この妖怪だって本当はサヤがその場所で世話になっていることなんか勘づいていたくせに。
2人に何があったのかなんて、話されたとしてもオレには分からないだろうけど。
サヤもオレに詳しいことを何も話そうとはしないし。
何かを覚悟したようにオレの前に現れた数年前を思い出す。
そんなサヤも17歳。
村の中では十分出遅れている年齢だ。