時には風になって、花になって。




「最終的にオレが引き取る羽目になるんじゃ───…いや冗談!ほんとに冗談…!」



それでもサヤにとっては初めての見合いだ。

別に顔立ちは悪くないし、性格だって問題はない。


…ただ、やっぱり少し普通とは違うだけで。



「やはり貴様は焼き殺しておくべきだったか」


「勘弁してよ…!真顔で言われるのすっごい怖いんだって!!」



妖怪と人間───。


確かに問題はたくさんあるとは思う。
そんな例は未だに見たことがないし。

それでも絶対、この男はサヤを誰にも渡すつもりはないはずなのになぁ。


離れて2年も何をやってるんだこの鬼は…。



「せっかく近くまで来たなら顔くらい見せて行けばいいのに」


「…まだ決着がついていない」


「決着?まだ駆除をして回ってるのか?」



スッと紅覇は宙を舞う。

確かに松姉が言ってた通り、月から舞い降りた菩薩様みたいだ…。



「───己との決着だ」



そう言ったと同時、男は消えた。



「ぐずぐずしてると人間なんかあっという間に死んじまうんだからな、紅覇さん」



紅覇さん知らないだろうけど、サヤは見違える程の美人になってるよ。








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