時には風になって、花になって。




「すみませんがこの話は無かったことに…」



男はごまをするように長松を見つめた。

息子の見合い相手の女を断る作法はそれがいっぱいいっぱいだったのだろう。


それでも「何故ですか?」と、簡単には引かないのが長松という女であった。



「この子は健気で素直で、確かに少しお転婆なところはありますが中々居ないでしょう」



手掴みで魚を採れるような女子なんて───と、傍らに座るサヤを引き寄せた。


料理も出来る、見た目だって悪くない。

ポンポンと長松はサヤの良いところをあげては逆にお宅の息子が駄目なのでは?とまで言ってしまう。



「や、やはり話せないというのは…些(いささ)か生活に支障が出るのでは───」


「あぁ!?生活に支障が出るってんならお宅の息子の稼ぎじゃないか!!」


「ひっひええっ、そうなんですが…っ!ごもっともなのですが…っ!」



初めての見合いは相手から申し出があった。

17を過ぎても娶っていない女子がいる───、そんな噂を聞き付けてはすぐに駆け付けてきた親子。


それでもそんな理由で断られる羽目になってしまったらしい。



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