時には風になって、花になって。
「そんなもんこっちから願い下げだっての!!馬鹿親子っ!2度と来るんじゃないよ!!」
「しっ失礼しましたぁぁぁっ!!」
食器やら竹箒やらを投げつけ、家から追い出した長松。
逃げるように親子は去って行った。
「お、落ち着きなって松姉。なにもこれで最後じゃないんだし…サヤにはたぶん、もっといい男が居るって」
「ほう?それで売れ残ったらあんた責任取れるのかい。サヤを幸せに出来るってのかい縁」
「いやオレは焼き殺されるのだけは勘弁…」
同行していた縁は未だに腹を立てる女を宥めた。
そして姉のように接してくれた人が長松であった。
それまで行動を共にし、家族同然として過ごして来た男の元を離れたサヤを快く受け入れてくれた人。
そこにいつからか縁という、かつて何処かの村で出会った青年も通うようになっていた。
「なにが生活に支障だ…っ!まるでサヤを異常者みたいに見るあの目が腹立つのよ…!」
こんなにいい子だってのに───長松の声は震えていた。
それからというもの、幾度同じような話を受けては同じような理由で縁談は破談。
全ての理由は一致。
サヤが普通ではないからだ。