時には風になって、花になって。
寂しいのはサヤだって同じだ。
紅覇の元を去ってから、幾度眠れない夜を過ごしたかはわからない。
泣いても昔のように抱き上げて空を飛んでくれる存在がいない生活は。
とても、寂しかった。
(でも、紅覇が愛したのはサヤのおっかあだから…)
そしておっかあが愛したのも、紅覇。
娘の私ばかりが幸せになっていいはずがない。
人間として生きて紅覇とずっと一緒に暮らすなんて。
そうしたかったのは、それを誰よりも望んでいたのは“ウタ”だ。
「本当にいいのか、サヤ。松姉はきっと誰よりもお前の幸せ願ってるから…、
この先もたくさん縁談を持ってくると思うよ」
サヤは静かに笑った。
肯定も否定も出来ないからこそ、笑ったのだ。
サヤが人間としての道を選んだのだって、おっかあの命を無下にしたくなかったから。
母がそれを望んだ。
サヤの命はきっと、母の夢でもある。
「…ならどうして泣いているんだ、サヤ」