時には風になって、花になって。
「つっても、あいつがこんなガキ連れてるなんて一体なんの風の吹き回しなのかね」
「紅覇は我が一族の恥さらしに過ぎん」
今まで妖怪を何度か見て来たことはあった。
蛙のような見た目をしていたり、手足がたくさんあるムカデのようなものもいたり。
そんな中でも村の法師はすぐに退治してしまったというのに。
(くれはっ、たすけて…くれは…っ)
妖気というのだろうか。
人間の自分でも微かに感じる、比べ物にならない違和感。
それはあのときも同じだった。
初めて鬼の青年を見たときと。
この人達はとてつもない力を持っている…。
そして男達の口からは“紅覇”という名前が出た。
「ったく暴れんなって。別にお前みたいなガキ、喰う価値もねェっての」
声が出ない。
空気を吸って吐こうとしても音が風に乗ってくれない。
じわっと流れる涙がキラキラと空中を舞った。
「───離せ。」
バッ───!!
びゅんっと風が吹き抜けたと同時、軽い身体は宙に投げられた。
ポスンッ。
「大人しくしていろ」