時には風になって、花になって。
「…あの爺さんもテメェが人の道を選んだと聞いた辺りから変わっちまった」
え、私いま、かつて自分達を危険に晒した妖怪と会話してる…?
気付けば隣にどっかりと座っている金鬼。
また変な黒い渦とか出さないよね…?
大丈夫…?
「お前のことを意外と気に入ってるぜ、羅生門様は」
わざわざそんなことを言いに来てくれたのか。
どうもありがとう、と口をパクパクさせて伝えておいた。
それにしてもこの笛は紅覇だけじゃなく、鬼の全員に共通して聞こえているのかな…。
それだったら余計に吹くのは控えよう。
「…それと、紅覇から伝言を預かってる」
サァァァァァと、風が髪を撫でた。
また伸びたサヤの髪。
1つに纏めていたとしても背中は隠れる程に。
こうして座れば腰にまで届きそうだった。
「…“元気にしているか。なにか辛いことはないか”」
ポツポツと金鬼は話し出す。
「“私のことは気にせず、お前はお前の幸せを考えればいい”」
おかしいね、この人は紅覇からの伝言を話しているだけなのに。
どうしてか声まで同じに聞こえてしまうんだもん。