時には風になって、花になって。




「───だとよ。伝えたぜ、ちゃんと」



ピーーーッ!


去ってしまいそうな鬼を止めるかのように、サヤは思いっきり笛を吹いた。



(サヤも、伝言、ある)



お前はお前の幸せを考えろ、なんて。

紅覇だけには言われたくないよ。



(サヤの幸せは紅覇と居るときに全部叶ってる。だから今度は……あなたの番)



こんなに長い言葉、全部は伝わらないかなぁ。



(サヤは元気だよ。サヤはね、縁談も決まりそうなの)



嘘を言った。

初めて、紅覇への強がりだ。



(それでもサヤは、紅覇がこれからもずっと大好き。
あなたがウタを愛したように、サヤも紅覇を同じくらい……愛して、いるよ)



風になって、花になるよ。


だから離れていてもずっと繋がっているんだよ。

きっと、おっかあも生きていたら同じ言葉をあなたに送っていたような気がする。



(サヤに幸せをくれて、ありがとう)



サヤは寂しくなんかない。

だって思い出は生きているから。



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