時には風になって、花になって。




幾年、幾百、幾千と生きてきてお前を一時でも忘れた日など無かった。

何度後悔に苛まれたのかも分からない。


あんな思いをするならば、と自ら人間を遠ざけた。

そして独りで生きると誓った。



「…そんなときにお前の娘に出会ったんだ」



最初の印象は、泥臭い。

それだけだった。


見ただけで孤児だということは分かった。
とても厄介だと思った。

仕舞いにはお前によく似ている。


ただ不思議だった。



「どうしたってサヤにお前は重ならなかった」



似ているからではない。

私があいつを傍に置いていたのは、そんな難しい話ではないんだ。


ただ、傍に置いておきたかっただけだ。



「私は人間のふりをしたお前に気付けなかった。その上で人間であるお前に、私は惹かれていた。…でもサヤは、」



『“くれは”は、“くれは”』


『紅覇という存在を産み出してくれてありがとう、と』



「あいつは最初から私が鬼であり妖怪であると知りながらも、ただの“紅覇”を
───…愛してくれたのだ」



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