時には風になって、花になって。




妖怪だと知っている。

鬼であることも知っている。


それなのにサヤは私を“紅覇”という存在として見てくれていた。



「きっと私とウタがお互いに求めていたものも、そんなものだったんだろうな」



人間も妖怪もどうだっていい。

そんなものに縛られない存在として、“私”として見て欲しかっただけなのだと。



「…ウタ、お前は間違っていた」



お前は変わった女で。

楽観的なのに本心は誰にも見せないような女。


だからかつての私も今の私も、お前の全てを理解しているのかと問われれば、どうしたって首を縦には振れない。



「人間も妖怪も何ひとつ変わらぬ。この世で生まれ、この世で生き、命あるものとして成長する」



その両方を知っているのはあの娘だ。

人間としても妖怪としても、サヤはそのどちらの心も持っている。


それでも寿命が長い妖怪より、短い人間を選んだ。

すぐ怪我をするような、そして簡単なことで生死を跨ぐような儚い命だとしても。


それでもサヤは人の道を選んだ。



「…妖怪も言うほど悪くは無い。私はそれをお前の娘から教えてもらったんだ」



< 157 / 180 >

この作品をシェア

pagetop