時には風になって、花になって。
若い青年は片腕に少女を抱えて、2人の男へと向かい打つ。
空を飛ぶように駆け抜けてサッと避けるように一回転。
そんなものがどこか綺麗な舞踊を見ている気持ちになった。
「やーっとお出ましか紅覇!こうして話すのは300年ぶりだなァ」
「…なぜ貴様らがここにいる」
「羅生門様の命令だ」
2対1だとしても退けを取らない素早さだった。
この2人もきっと妖怪だ。
見た目は紅覇と同じ若い人間の姿だとしても、彼のように人間とはかけ離れた力を持っているだろう。
「あの爺さんがテメェを連れ戻せって煩くてな」
「私は帰らないと言ったはずだが」
ぎゅっと、少女は風に靡く銀色の袖を掴んだ。
ガキィィィン!!と爪の合わさる音。
ドンッ!と鈍い音と共に、相手の1人が吹き飛ばされた。
「貴様…また逃げるのか…!!紅覇ッ!!」
そしてサヤは静かに気を失った。
*