時には風になって、花になって。




「本当にいいのかサヤ!!」



何回、何十回と同じ質問をしてみても少女はゆっくりと頷くだけだった。


───サヤの縁談が決まった。


相手はどうにもかなり年上の男らしく。

ただ若い娘が手に入ればいい、なんて本心を隠しながらも真面目な顔をして近付いてきた男だった。



「オレは反対!!だったらまだオレにしといた方がいいよ!!」



焼き殺されたっていい───縁はどうにもならない葛藤をぶつけた。

それでも目の前の女は既に白無垢を身に纏い、色付けるように化粧が施されていて。



「今更なに言ってんのよ」


「なんでもっと早くに教えてくれなかったんだよ松姉!!」


「着々と進んじまったからねぇ」



長松はサヤの衣装を着付け終わると「よしっ」と気合いを入れるかのように、その背中を叩いた。


いやいやいやいやいや。

どうしてこうなった?

だって今までぜんぶ酷い理由で破談になってたというのに。


今日が婚礼の日だなんて絶望的だ。



< 160 / 180 >

この作品をシェア

pagetop