時には風になって、花になって。
「お…っわぁっ!!」
ガッ!っと胸ぐらを掴む勢いで、男は目の前に人差し指を突き出してくる。
長い爪が額に当たりそうだ。
「え、ちょっと待ってよ紅覇さん…っ!!なんで!?」
「誰が醜女だというのだ」
「………はい…?」
「誰が不細工なのかもう1度私の前で言ってみろ」
腰が砕けそうだった。
たぶん、オレがこの答えを間違えたらその指の先から火炎を出すだろう。
確実に焼き殺すつもりだ、オレを。
「……め、滅相もございません…」
「訂正するか」
「は、はい…もちろんです…」
そもそもなんで知ってるんだ…?
だってあのとき、あの場所にはサヤとオレしか居ないはずだというのに。
この人…もしかして誰かに化けて聞いてたとか……?
「2度目は無い」
男はふっと笑って指を離した。
次に移された視線の先は、松姉が居た。
「…お前には感謝している」
「まったく遅過ぎんのよ。人間はそんなことしてたらあっという間に婆さんよ?」
「あぁ。…だがどんなに年老いていようが愛していれば問題なかろう」