時には風になって、花になって。
その場に居た女全員が今の言葉に顔を赤くさせた。
「───…」
そしてとうとう男は、一番奥に座る白無垢を着た少女の元へと向かった。
化粧をしている少女を前に、少しだけ紅覇が息を飲んだような気がする。
鬼の青年は目を見開く少女の前に来ると、ゆっくりとしゃがむ。
そうして丁寧に目線を合わせた。
「…私をずっと呼んでいたであろう」
呼んでた…?
いいや、サヤは今日はずっと静かだったよ。
まぁ1つ言うなら、婚礼が始まる前に小さく笛を吹いていたくらいで。
「私と共に…来るか」
そんな言葉は、鬼であるその男の一世一代の告白にも取れる。
それでもサヤは反応しない。
ずっと目を丸くさせたまま、見つめ続けていた。
(……っ、…っ…)
今度はその瞳からポロポロと化粧を落としてしまう程の雫が流れた。
「共に来れば…いま以上にお前に辛い思いをさせるやもしれんぞ」