時には風になって、花になって。
「その娘を離せ…!!そいつはワシの妻となる娘だ…っ!!」
妖怪が、化け物が。
そう何度も冷たい言葉を浴びせる男にすら紅覇は左右されない。
ただじっと見つめ、小さく唇を開く。
「この娘は貴様の妻になどなりたくはないと言っている」
「なっ、なにを言ってるんだっ!!そんなこと一言も言っておらんかったぞ…!!」
確かにサヤは何ひとつ言葉を発してはいなかった。
じっと見つめては涙を流して、弱々しく笛を2回吹いただけだ。
「デタラメばかりぬかしおって…!!それにこの娘は話せぬだろう!!」
「それがどうした」
「ワシには金がある…!富がある…!!そんなワシがわざわざこんな小娘を貰ってやるというんだ…!!」
なに不自由ない暮らしをさせてやれる。
ただ娘は黙ってワシの世話をしていればよい。
こんな機会を逃せば次は無いぞ───。
「そんなもの要らん」
「そんなはずがない…!何故わかるんだっ!!」
「私には全て聞こえている」
「なにぃ…?」
すると男は吹っ切れたように笑い出した。
「ふんっ、もう良いわ。所詮は若いだけしか取り柄のない女としての欠陥品なのだからな」
男はとうとう本性を現した。