時には風になって、花になって。
「こっんのクソジジ───」
オレが早かったか、それとも松姉の方が先か。
立ち上がって殴りかかる勢いで拳を握ったけど。
目の前の男は「あちっ…!あちっ!」と這いずり回る。
「遺言はそれだけか」
「ひぃっ!!熱いっ…!助けてくれぇぇぇ!!」
新郎の袴はメラメラと炎で染まってゆく。
初めて会ったときは左腕が無かったのに、今は両腕が揃っていた。
だからこそ妖力もあのとき以上に発揮出来たりして……。
「ちょっ!紅覇さんっ!やめろって!死んじまうって…!!」
「こぉら紅覇!!!誰がそこまでしろって言った!?やり過ぎよ馬鹿…!!」
オレと松姉がどんなに叫んだとしても「私は手加減など知らん」と言って、右手にぐっと力を込める鬼。
男は泣きながらごめんなさいごめんなさいと謝り始めた。
───そのとき。
ピーーーーッ!!!
今日初めて、笛としての正しい使い方だった。
その音が響くと燃え上がっていた炎はピタリと止んでしまった。