時には風になって、花になって。




鬼の腕に抱えられた新婦は、オレがずっと見たかった笑顔で笑っているものだから。

そんなものに気付いた紅覇はふっと笑って、バサッと空へ高く上がっていった。



「妖怪と人間が結ばれるなどあり得るわけがないだろう…!!馬鹿か…っ!!」



全く、最後の最後まで懲りないジジイだ。

あり得ない、普通じゃない───そんな言葉はサヤと紅覇が今まで誰よりも聞いてきた言葉だろう。


それでもオレは紅覇さんと居るときのサヤが本当のサヤだと思う。

そして紅覇さんだって。

サヤと居るときのあんた、すっごくやさしい顔してるんだよ。


それは人間が人間を見るものでも、妖怪が妖怪を見るものでもなくて。

───ただ愛しい存在を見つめる眼差し。



「そんなものどうだって良い。人も妖も、誰かを愛することが出来る」



それだけだ、と言って2人は消えて行った。


また戻って来てくれよ紅覇さん。

そしたらオレは今日と違って盛大に祝うから。



「考えもしてなかったよ」



ポツンと残された中で、長松は呟く。




「今のあの2人を見て、どっちが妖怪でどっちが人間かなんて───…そんなこと何ひとつ」




その声は喜びに満ち溢れていた。








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