時には風になって、花になって。




そのまま下ろすことをせず、お姫様のように抱えてくれる。

2羽の小鳥が海の先へと羽ばたいて行った折、紅覇はようやくサヤへ眼差しを向けた。



「お前は醜女ではない。不細工でもない」



なにを言ってくれるかと思えば。

そういえば縁にも同じことを聞いていた。



「お前は……可愛い」



少し顔を赤くさせている青年。

サヤは未だに現実味の無い全てのものに追い付くので必死だった。


どうしてそのことを知ってるの?

だってあのとき紅覇は───…



「それと金鬼とは関わるな」


(でも前に、)


「あれは私だ」



薄々気づいていた。

サヤの言葉をあんなにも読み取れるのなんか、紅覇くらいしか居ないから。


でも今はそんなこと、どうだっていい。

紅覇がここにいる。
サヤの前にいる。


それだけで、いい。



「お前は人の道を選んだ。そして私は鬼だ。その行く末は誰だって想像が出来る」



人間の一生は鬼の一瞬。

この人の前からいつか消えるのはサヤ。
そしてこの人を残してしまうのはサヤ。


でもサヤは───…



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